●2008年8月31日

【ララバイブラザーズ 対談】

ピアノララバイ    ギターララバイ
 
早川岳晴       KI-YAN
 



●どんな曲をやってもララバイブラザーズになる
 ……そんな確信から生まれたアルバム

−『三枚目のダイアローグ』制作にあたっては、どんなアルバム作りを目指していましたか?

ピアノララバイ 「今回は、ララバイブラザーズのアイコン的な存在になるアルバムを作りたいという思いがありましたね。聴いてくれた人が一枚目、二枚目も聴きたくなるような。自分たちの売りの部分も入れつつ、新しい試みも入れつつ、広がりのあるアルバムにしようと」

ギターララバイ 「過去の二作は二人で演奏できる形態を考えて、それをバンドバージョンに発展させる形だったけど、今回はバンドで収録した曲の半分以上があらかじめバンドでやることを前提に作ったものなんですね。だから、ライブを二人でやるときには逆に二人バージョンに再アレンジしなきゃいけない」

ピアノララバイ 「バンドでやってる曲を二人でやろうとすると、大変なんですよ」

ギターララバイ 「まだできない曲もあるけど(笑)」

 

−早川さん、KI-YANさん、今回のレコーディングでのご感想は?

早川 「……成長したよなあ!」

ギターララバイ 「ありがとうございますっ! ちなみにどんなところが?」

早川 「背が伸びたかな」
 (一同、苦笑)
早川 「曲のつくりがていねいになったんじゃないかな」

ギターララバイ 「前は……雑でしたか(笑)」

早川 「そういうわけじゃないけど(笑)。ぼくと北沢(KI-YAN)に関しては、曲ごとにわりに簡単な指示をもらって、ぼくらが自由にアレンジする形で。自分の持ち味を出しつつ彼らの音楽に入りこむというスタイルでやってるわけだけど。今回は、前よりもっと深いところまで入って溶けこんでいる、より一体になれたんじゃないかと思う」

KI-YAN 「レコーディングはすごくおもしろかったですよ。歌も歌ったし、手拍子したり」

早川 「北沢くんはパーカッションもいろいろ入れたりしたけど、それがかなり効果的だったと思うよ。すごく表に出る音じゃないけど、なくてはならない……曲のカラーがいっそうくっきりと浮き出ることをやってくれましたよ」

 

ギターララバイ 「ダビングやミキシングで遊んだり、いろんなアイディアを盛りこんで。録音したものが『作品』になる過程が楽しかったです。二枚目までは、どちらかというと生演奏に近い音を志向してたところがあったけど」

−今回はラテン風、タンゴ風の曲もあり、よりジャンルレス度が高まったようですね。

ギターララバイ 「最初のころは歌もののポップスにジャズやブルースのエッセンスを加えたようなタイプの曲が多かったですが。ジャズっぽい曲は減ってきたのかも」

ピアノララバイ 「あらためて二枚目を聴き直してみて、このメンバーでやればどんな曲を持ってきても『ララバイブラザーズ』になるのかなって気づきましたね。だから、ためらわずに自分たちがおもしろいと思うことをやっていこうという気持ちになれたかな」

 

●ついに言いたいことを言ってしまった!?
 三枚目の正直で現れた『でたらめララバイ』

−さまざまなタイプの曲がありますが、とまどったりすることは?

早川 「とまどいは、ない!」

KI-YAN 「さすがぁっ!」

早川 「でも、譜面は見にくいな(笑)」

KI-YAN 「ホントに見にくいんですよ。だいたい、中西くん(ピアノララバイ)の譜面は長い!」

ピアノララバイ 「クラシックやってる時からの癖なんですけど、繰り返し記号とか入れて譜面書くのがイヤなんですよ。まあ譜面めくりながら弾けばいいかなと」

早川 「こっちは両手ふさがってるんだから」

KI-YAN 「めくれないんだってば!」

ピアノララバイ 「もうしわけないっす」

KI-YAN 「レコーディングの時は、譜面台に置ききれないから見えるとこに貼りまくって、最後のほうは床に置いてある(笑)」

ピアノララバイ 「ぼく、最初っから最後まで書きたいんですよ! 繰り返しにすると『なんだ、同じことするんか』と自分でつまんなくなっちゃって。一番と二番は、極力違うことをしたいんです。そこを書きこんでるうちに、長い譜面になっちゃうんですね」

   

早川 「ぼくはいつも、自分用に(見やすく)書き直してるからね」

KI-YAN 「で、ぼくはそれをちょっとコピーさせてもらったりなんかして(笑)」

−そんなリズム隊間の美しい助け合いが。

KI-YAN 「一方的に助けられっぱなしですけど」

ギターララバイ 「これを機に、リズム隊のお二人に聞いてみたいことがあったんです。大御所から見て、ララバイの曲はどんなもんですかね? おもしろく演奏してもらってるんでしょうか?」

早川 「おもしろく演奏してますよ。勉強になることも多いし」

ギターララバイ 「(恐縮して)いやいやそんな……」

早川 「曲、みんな好きだし。自分が楽器弾く以上は、何か得たいと思ってやってるし」

KI-YAN 「ララバイの二人って、いい意味で本物チックでもない。何かひとつのスタイルを決めちゃってポンとやってるだけでもない。そこが魅力かな。自分としては、そのどっちにも寄らないところがいっしょにやってておもしろいと思うところだけど」

早川 「二人の作る音楽には、今まで親しんできたものや音楽の好きな部分が自然に出てると思う。だからジャズ風とかラテン風とか、そういうふうに言葉にして考えることはないな」

−アルバム中、特に思い入れの強い曲は?

(一同、長考)

KI-YAN 「一曲を挙げるのは難しいですね。一曲一曲どの曲にも集中して取り組んでるし」

−どれにも愛情がこもってるんですね。

KI-YAN 「アホやからね、つい熱中してしまうんです(笑)。やると、ワクワクする曲ばっかりなんですよ」

ギターララバイ 「詞の面からいえば、『でたらめララバイ』(※リンク先は音が出ます)っていう曲は、ぼくらにとって大事な曲だと思いますね。これまでは、言いたいことみたいなのをあえて詞にしないようにしてたんです。だけど、ちょっとひねくれた言い方になるけど、この曲に関しては初めて言いたいことを言ってしまったなあと」

 

ピアノララバイ 「根がシャイですから(笑)」

ギターララバイ 「シャイボーイなんで(笑)」

ピアノララバイ 「一番の歌詞は思いっきりナンセンス。それでいて二番で突然メッセージ性が飛び出てくるのがこの曲のおもしろいところ、ぼくの好きなところ。まあ、ギターララバイくんの手腕ですね」

−けっこう思い切ったメッセージを発信していると感じますが。

早川 「いいんじゃない? どこにもありそうな歌詞を歌っている人には興味が持てないし。とはいえ、どこにもなさそうな歌詞ならいいってわけじゃないけど」

ギターララバイ 「うっっ(絶句)!」

早川 「いや、ぼくは気にいってますよ(笑)。知り合った時おもしろいと思ったのは、ララバイは二人とも楽器でいろんなことやるのに演奏のほうにいかないで歌を始めたのが、ね。自分は演奏ばっかりだから」

−ということは、歌詞にして言いたいことが実はけっこうあるのでは?

ギターララバイ 「ないな……いやある?」

ピアノララバイ 「(ものすごく小さい声で)あるかな……。ある?」

ギターララバイ 「たぶん、あるけど……恥ずかしい! 前は言うのもおこがましいかなと思ったけど、ぼくたちもうすぐ30歳になるんですよ。30になったらそのへん言ってこうかなって、ずっと思ってはいたんです」


●ライブとなると人が変わる!?
 ララバイの本性(?)を体感しよう

−では、レコ発ライブについてに向けての意気ごみを。

ピアノララバイ 「がんばりまーす(こぶしを肩くらいまで挙げながら)」

−その控えめな挙げ方はどうなんですか?

KI-YAN 「いやあ、がんばったでしょ! ここまで挙げたの、ぼく初めて見ました(笑)」

早川 「白熱のライブを。……まあ、白熱する……ところもあるライブを繰り広げましょうよ」

   

ギターララバイ 「白熱しがちなライブを!」

(録音エンジニア:小林)「裏の見どころはだれが間違えてだれが素知らぬフリをするかですね」

ギターララバイ 「そりゃ全員でしょう!」

KI-YAN 「間違えるのは全員かもしれないけど、素知らぬフリができるにはなかなか経験とテクニックがいりますよ。あ、素知らぬフリが上手なのはもちろん早川さんです(キッパリ)。っていうか、気づいてさえいない?(笑)。でも基本、音楽に間違いはないんです!」

早川 「人生に間違いはつきもの」

KI-YAN 「そこは反省して日々努力するとして(笑)。でもねえ、ララバイブラザーズの二人はおとなしそうに見えて、本番になったらものすごく白熱するんだから。もうグワーッと走っていく感じ。ぼくなんか『待ってくれーっ』て感じだよ」

ギターララバイ 「そうだ、アルバムに入ってる『テクニカルターム、サイケデリックラブ』は今度初めてライブでやります! CD盤とはかなり違うアレンジになるはずなので、ぜひライブならではのバージョンを聴きに来てください。今からスタジオリハーサルなんですが、その時間の半分くらいを使って練習することになるかと……」

KI-YAN 「うわ、そんなにやるんだ」

早川 「まあ、ぼくらは2人を支えて」

KI-YAN 「精一杯やりますよ!」

ギターララバイ 「そもそもぼくらが言いたいことのほとんどは、単純に『楽しく音楽がやりたい』ということ。それを伝えるには言葉じゃなくて音楽に説得力がないと意味がないから、これまでメッセージ性を出すことに躊躇があったんですけど。そういう意味でいうと、経験豊富なお二人にサポートしてもらってるせいもあって演奏はめちゃくちゃ楽しいんで……お客さんにも楽しんでもらえるようがんばります!」